アポトーシス
(Apoptosis)

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アポトーシスは、形態学的および生物学的変化を伴う、高度に調節されたプログラムされた細胞死のプロセスです。 このプロセスは胚発生や生物の大きさの維持、損傷細胞や異常細胞の排除に重要な役割があります。 異常なアポトーシスによって引き起こされる疾患も多く、ヒトの健康においても、アポトーシスの重要性が注目されています。アポトーシスの調節不全は、様々な癌や神経疾患、心臓血管障害、自己免疫疾患に関係しています。

アポトーシスの測定 (Measuring Apoptosis)

フローサイトメトリーで測定できるアポトーシスの最も一般的な特徴の1つは、正常細胞では細胞膜の内膜に見出されるリン脂質ホスファチジルセリン(PS)の、外膜への露出です。 アネキシンVはホスファチジルセリンに結合するため、蛍光色素で標識したアネキシンV(Annexin V)で評価することができます。 その際、アポトーシス細胞とネクローシス(壊死)細胞を区別するため、Propidium Iodide(PI)などの生存率判別色素と組み合わせて使用します。正常細胞は両方のマーカーで陰性であり、アポトーシス細胞はアネキシンVに対して陽性、ネクローシス細胞は両方のマーカーに対して陽性です。 Jurkat T細胞をスタウロスポリン(Staurosporine)で処理すると、アポトーシスが起こり、続いてネクローシスが起こります。 図33のタイムコース実験では、アポトーシス処理して1時間後にアネキシンVの染色が増加し、続いて6時間後のネクローシス細胞が増加することを示しています。

細胞がミトコンドリア外膜透過化(MOMP, mitochondrial outer membrane permeabilization)後のアポトーシスの段階に至るまでは、ホスファチジルセリンの露出は動的で可逆的なプロセスであるため、アネキシンV結合による方法では早期アポトーシスと後期アポトーシスと区別することができません。 pSIVA(Polarity-sensitive indicator of viability and apoptosis)プローブ は、ホスファチジルセリン(PS)に可逆的に結合し、PSが外膜から内膜にフリップするのに伴って、蛍光をオンオフするバイオセンサーです。 処理条件の違いに応答するアポトーシス段階の違いをリアルタイムに比較できます。

その他の方法(Alternative Methods)

アポトーシスの後期に起こるDNAの断片化は、フローサイトメトリーによるSub-G1アッセイにより測定できます。 アポトーシスの間に生じた約180bpの小さなDNA断片は細胞から漏出し、アポトーシス細胞の総DNA含量を減少させます。 Propidium Iodide(PI)でDNAを染色することにより、低二倍体アポトーシス細胞(hypodiploid apoptotic cells)をPIヒストグラムにおけるSub-G1ピークとして計測することができます。 また、DNAマーカーによる染色は前方散乱シグナルが減少することと組み合わせることで細胞収縮の測定を可能とします。

初期のアポトーシスは、細胞のミトコンドリアの電位勾配の低下を評価する電位差感受性色素によっても測定することができます。 これらの例には、 テトラメチルローダミンメチルエステル(TMRE)テトラメチルローダミンエチルエステル(TMRM)、およびJC-1があります。これらの脂溶性色素は、非アポトーシス細胞のミトコンドリア内では凝集して、明るく蛍光を発します。 ミトコンドリア膜電位が崩壊すると、色素はモノマー状態で細胞質に分散し、蛍光の低下と色調の変化をもたらします。 これらの色素は、活性型カスパーゼの存在により蛍光を発する試薬、FLICA(fluorophore labeled inhibitor of caspase assays)や特定のカスパーゼに対する抗体のような他のアポトーシスマーカーと組み合わせることができます。

リソースと製品(Resources and Products)

バイオ・ラッドでは、フローサイトメトリーやその他の一般的な抗体のアプリケーションに最適化した多くのリソースと製品を用意しています。アポトーシスとアポトーシス関連試薬について詳しく解説しています。